Cat7 が Cat6 より速いなんて だれが言った? (Category 7 LAN cable の憂鬱)

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Category 7 LANケーブル の憂鬱

Cat7 は Cat6 より速い。それは “幻想”

伝送性能区分「クラスF」、クロストーク・ノイズに対しての耐性を高めるため撚線にシールドを施し、かつケーブル全体にもシールドを施した“二重シールド構造”により、隣り合ったケーブル間で発生するノイズ干渉により起こるエラー(エイリアンクロストーク)を防ぐとか、EMI(電磁妨害)の遮蔽効果に優れているなどと謳われている Cat.7 や Cat.7A は、上位互換性がありますが、UTP ケーブルである Cat.6, Cat.6A 以下とは違って、規格が STP ケーブルとしての仕様になっている点で、UTP同士である Cat5 から Cat6 に単純に置き換えるのとは話が違い、大きな差異があります。

あと、我々が LANケーブルの売り場で、一目見て、違いが分かるのは、カテゴリ毎の価格帯です。
エレコム製品を例にすると、
CAT7 カテゴリー7 10G BASE-T / 1000BASE-TX / 1000BASE-T / 100BASE-TX / 10BASE-T
伝送速度 10Gbps, 伝送帯域 600MHz
スタンダードタイプ -Cat7- 10G BASE-Tに完全対応した ツメが折れないLANケーブル (Cat7対応) 3.0m LD-TWST/BM30 標準価格(税抜) 4,380円

CAT6 カテゴリー6 1000BASE-TX / 1000BASE-T / 100BASE-TX / 10BASE-T
伝送速度 1Gbps, 伝送帯域 250MHz
スタンダードタイプ -Cat6- ギガビット・イーサネットの高速通信に最適 ツメ折れ防止LANケーブル (Cat6対応) 3.0m LD-GPT/BU30 標準価格(税抜) 1,190円

こうして比較してみると、Cat7 は Cat6 よりも単価が 4倍近く高価な値段に設定されています。金メッキシールドも理由の一つかもしれませんが。
じゃあ、Cat7 は Cat6 よりも 4倍以上「データ転送スピード」が速く出て、4倍以上「物理的に長持ちする」のか? というのが、素朴な疑問です。4倍の価格差に見合うだけのコストパフォーマンスがなければ、使う意味は全く無いと言えます。

しかし、そもそも UTP と STP の違いについて理解した上で Cat7 を購入している人はそう多くはありません。UTP は Unshielded Twisted Pair の略で、撚り対線(よりついせん)とも呼ばれ、ツイストペアケーブルと呼ばれる、2本の銅線がより合わされた構造を持つ通信ケーブルです。STP は Shielded Twisted Pair の略で、ツイストペアケーブルのうち、表面に箔や編み込みで作られた薄い皮膜を使用して包み込むようにカバーとして巻き付けることで電磁遮蔽シールド処理が施されたケーブルのことです。STPケーブルというのは、ノイズが多く発生する工場や研究所など、特殊環境における利用を想定して開発されたものであるため、STPケーブルの性能を十分に発揮させるためには、専用に 0vの基準点となる通信用接地(いわゆる、アース)を接続し、接続機器全体が接地でループされた状態を構築することが必要です。つまり、STPケーブルを使用した通信インフラを構築する場合、通信専用のクリーンな基準接地の確保を行い、かつルータやスイッチングハブなどの周辺のネットワーク中継機器も全て接地が確保できる製品でなければ意味が無いのです。それに、アースを未設置だったり、アースが途切れた状態で使用した場合、部分的にノイズの発生が集中するなど、かえって通信品質に悪影響を及ぼす現象すら起こります。そういう点で、宅内の有線LAN(Ethernet)回線の用途で使用するのであれば、クリーン接地による基準電位の確保など難しいですから、高い買い物までして Cat7以上の (STP仕様の) LANケーブルを採用するメリットなんて何も無いといっても過言ではありません。家庭用の家屋によくあるタイプの D種の保安接地(冷蔵庫,電子レンジ,洗濯機などの家庭用電化製品に付属されているアース線を接続することで感電被害の防止を図るための設備で、よくコンセントの付近に用意されている端子)しか供給されていない住宅内で、現行のSTP未対応のルーターやハブを流用した機器構成で回線を繋いだとしても、STPケーブルが本来持つパフォーマンスを発揮させることなんて、物理的に不可能なのです。
家庭内LAN環境で 高性能なSTPケーブルを使用したとしても、データ伝送の高速化や安定化は望めないという皮肉なお話は、都会の公道の場で ブガッティ・ヴェイロン(Bugatti Veyron ミッドシップマウント 8.0L W16エンジン 4ターボチャージャー搭載)のような 1000馬力を軽く超える超弩級のモンスタースーパーカーを運転しても実用性が乏しく、何のメリットも無い、というか寧ろ上手く乗りこなせずに自損事故を起こす確率の方が高いし、さらにそういう理由で維持費や自動車保険料もべらぼうに高額なコストが掛かる、というのと同じようなものです。

でも、そんなオーバースペックとも言えなくもない Cat7 LANケーブルを一般大衆向けに販売しているメーカー的には、この事実(Category 7 cable には、STPケーブル専用の環境および周辺機器のSTPサポートが必要であること)に、積極的に触れてはいません。

なんでかというと、それは・・ 「クイズ 世界は SHOW by ショーバイ!!」
それが“商売”ってヤツです。

まあ、そりゃ、ここだけの話、伝送速度、伝送帯域、カテゴリ番号が大きく、おまけに価格も高級なケーブルの方が、よりスピードが出て、快適なインターネットができるだろう、そうに決まっている・・と勝手に思わせておけば、消費者にそういう“思い込み”がある分だけ、LANケーブルに“カテゴリ”という格付けがあることを知っている人の方が、そもそもカテゴリがあることすら知らない人(LANケーブルなんてどれも一緒でしょと思っている人)よりも、ありがたがって買うわけです。下手に何も言わない方が売れます。余計なことは言わずに黙って放っておこうということであれば、それは確信犯ではありませんよね。怖い、怖い・・ (^_^;)

 

本記事のタイトルは、副題として「思索する女子学生の遺書」と銘打たれた 広津里香さんの「死が美しいなんてだれが言った」へのオマージュとなっています。

 

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コメント

    • so-ra
    • 投稿日 (Posted on):

    山手線みたいな在来線のレール上に、リニアモーターカーを走らせようとしても仕方ないもんね。

    • so-ra
    • 投稿日 (Posted on):

    過ぎたるは及ばざるがごとしの典型例か・・

    • so-ra
    • 投稿日 (Posted on):

    カテゴリー7のLANケーブルは必要ないのか?

    • so-ra
    • 投稿日 (Posted on):

    LANケーブルカテゴリ7は必要ないのになぜ販売してるの?

    • so-ra
    • 投稿日 (Posted on):

    カテゴリーの数字が大きい方は、それ以下のカテゴリーが対応している全ての規格に対応するので、迷ったら数字の大きいケーブルを選ぶと安心です。(http://www2.elecom.co.jp/cable/lan/index.html#1)

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